トン数(TONNAGE)とは
古くから船の大きさを表す単位として「トン(TONNAGE)」が使用されている。これは、英国でボルドー酒を輸入する際に使用した樽(CASK)に由来する。
14世紀の英国では船にボルドー酒の樽を何個積載しているのかで輸入税が掛けられたのだが、この樽を叩いたときの音「タン(TUN)」が転訛して「トン(TON)」となり、このボルドー酒の一樽の重量に相当する重量を「トン(TON)」という単位で表したのが始まりである。
英国では、このボルドー酒の樽は252ガロン(OLD WINE GALLONS)入りと定められていたが、船に積載する際には、一樽につき40立方フィートの容積を占めたことから、容積の単位としても使用されることになった。つまり、ボルドー酒樽以外の貨物を積載する場合でも、40立方フィートの樽を何個積載できるかで、容積トン数として船の大きさを表したのである。
この40立方フィートの容積の樽に酒を入れた重量は2,240ポンド(1,016キログラム)であることから、英国ではこの酒樽の重さを「1ロングトン(LONG TON)」と定め、重量トン(DEAD WEIGHT TONNAGE)として使用されている
ちなみに容積トン数は1854年以降「100立方フィート(2.8317立法メートル)」を「1総トン(GROSS TONNAGE)」と呼ぶようになり現在に至っている。
この他に軍艦の大きさを表すのに使われる排水量トン(DISPLACEMENT TONNAGE)があるが、王国海軍では鉄製(もしくは鋼鉄製軍艦)のトン数を表すのに1873年以降使用され始め、1921年のワシントン軍縮会議で、各国でバラバラだった軍艦の大きさの表し方を統一し他国の軍艦と比較し、排水量制限(大きさの制限)を有効とするため使用されるようになったものである。 ただし、フランス海軍、オランダ海軍では1850年代にすでに使われ始めている。
この排水量トンは(DISPLACEMENT TONNAGE)は、木造帆走軍艦時代の英国では一般的ではなかった。では木造帆走軍艦時代に使用されたトン数というと「BUILDERS OLD MEASUREMENT(B.O.M)」で、これは貨物の積載量トン数(BURTHEN TONNAGE)*1である。
1780年に発行されたWilliam Falconer著「An Universal Dictionary of The Marine」にも「BURTHEN」の項目と説明はあるが、「DISPLACEMENT」は項目すらない。また、 1805年発行David Steel著「THE SHIPWRIGHT'S VADE-MECUM 1805」という当時の造船に関する本には、「BURTHEN TONNAGE」の計算に関する説明と船の重心計算に関して説明はあるが、「DISPLACEMENT TONNAGE」について書かれていない。
木造帆走軍艦時代のトン数(TONNAGE)を排水量トンとしている和書をよく見かけるが、勘違いをしている翻訳者が多いので気をつけて欲しい。
ちなみに「TONNAGE」とは「TON数」に対する課税を意味し、転じて英語では船の大きさを表す「トン数」として使われている。