「England expects that every man will do his duty(英国は各員がその義務を果たすことを期待する)」
1805年10月21日11時50分ごろHMSヴィクトリーから地中海艦隊に向けて掲げられた有名なネルソンの信号である。当たり前だけど「Nelson's Prayer(ネルソンの祈り)」を知らなくてもこの言葉を知っている人は多いだろう。
今でも「England expects」だけでネルソンの有名な督励信号として知られている。又、トラファルガー海戦から100年後の日本海海戦の際に東郷平八郎の督励信号「皇国の興廃この一戦に在り。各員いっそう奮励努力せよ」の元ネタである。
ネルソンは11時30分ごろ、フランス・スペイン連合艦隊に向け進撃するHMSヴィクトリー艦上でネルソンは信号士官のジョン・パスコ大尉に「England confides that every man will do his duty(英国は各員がその義務を尽くすことと信ずる)」との信号旗を掲げるよう命じた。しかし、サーホーム・ポファム提督の考案した信号コードに「confides (信ずる)」が無かったため、「expects (期待する)」に変えることとの許可をパスコ大尉は求めた。ネルソンはそれを承諾、かくして有名な信号がHMSヴィクトリーの艦上に掲げられたのである。
HMSヴィクトリーの艦上では11時50分ごろから掲げられた、信号だけで12回の上げ下げが必要であり、4分間で送信を完了した。
この信号はサー・ホーム・ポファム提督の考案した信号コードでつづられている。「England」は2-5-3、「Expects」は2-6-9というようにひとつの単語が数字で表された。しかし「Duty」だけは単語のコードが無かったため、「D」は4、「U」は2-1、「T」は1-9、「Y」は2-4と一字ずつ掲げられた。「DO」は2-2-0であるが、二番目の2は「Substitute(同上)」の信号旗が使用されている。
また、10月21日12時25分、全艦隊に向けてNo.16(Engage the eneny more closely)が掲げられた。
今でも毎年10月21日のトラファルガー海戦記念日だけポーツマスのHMSヴィクトリーの各マストに掲げられる。
トラファルガー海戦200年記念日のHMSヴィクトリー(2005年10月21日撮影)
受信用意・・・・・・・メイン・マスト・トップ
England Expects・・・メイン・マスト・トップ
That Every・・・・・・フォア・マスト・トップ*1
Man・・・・・・・・・ミズン・マスト・トツプ
Will・・・・・・・・ピーク・ガフ
Do・・・・・・・・・メイン・トップ・ヤード、スターボードヤーダム
His・・・・・・・・・メイン・トップ・ヤード、ラーボードヤーダム
D・・・・・・・・・・フォア・トゲルン・ヤード、スターボードヤーダム
U・・・・・・・・・・フォア・トゲルン・ヤード、ラーボードヤーダム
T・・・・・・・・・・メイン・メイン・ヤード、スターボードヤーダム
Y・・・・・・・・・・メイン・メイン・ヤード、ラーボードヤーダム
No.16(Engage the eneny more closely)・・・ミズン・トップ・ヤード、ラーボードヤーダム