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Age of Sail
Age of Sail艦艇 / BestBowerAnchor
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Best bower anchor anchor.png

 映画「マスター・アンド・コマンダー」のDVD、DISK2の特典映像「未公開シーン~艦上生活」 にオーブリー艦長が海水浴のついでに艦をチェックして「Best bow is chipped.(右舷大錨に破損)」 と言っているシーンがある。

 「Best bow」とは「Best bower anchor」の略、「右舷大錨に破損」と日本語字幕がついているので 「Best bow」が「右舷大錨」であることはすぐわかる。では左舷の錨はというと「Small bower anchor」と呼ばれる。 「左舷小錨」とでも呼びたいところだがさにあらず。右舷錨、左舷錨とも重さ、大きさともにほとんど違いない、 右舷錨のほうが多少重い程度である。  何故「bower」と呼ばれるかというと、常に艦首(bow)に装備されていたからである。そして、 艦首両舷に装備される大錨のうち重いほうを右舷錨として常用したことで「Best bower anchor」、多少軽い左舷錨を 「Small bower anchor」と呼ぶようになった。

13.jpg写真はHMSヴィクトリーの「Bower anchor」

 錨は その大きさの割りにとても重要なものである。錨は投錨時にはしっかりと海底に食い込まないと役に立たないが、 同時に引き上げる時には、外れや易いものである必要があった。しかし、海底に引っかかって上がってこないことがしばしばあったので、 この当時予備の錨(「Sheet anchor(予備錨)」)も常に積んでいた。  木造帆走軍艦の時代の錨はストック・アンカー(Stock anchor)と呼ばれる形式のもので、当時の一等級戦列艦 (HMSヴィクトリーは排水量3500トン)が投錨し強風、潮流などで艦が回頭出来るだけの強度を持っていた。投錨時、 海底では一方の錨の爪が海底に食い込みストックが海底で水平に横たわることで姿勢を保つように作られていた。

 錨の本体は鍛造鉄を何枚も鍛造接合し作られ、錨本体の鉄の爪と直角に木製のストックが固定されていた。 木製ストックは2枚の板を鉄の輪でしっかりと締め付けられ、釘が何本も打ち込んであった。 この当時の錨はとても重要な艤装品で、高価なものであった。19世紀はじめ戦列艦の主錨の価格は470ポンドで、 一等級戦列艦に積み込まれた錨全ての価格を合わせると1750ポンドにもなった。 またその重さは、1800年当時HMSヴィクトリーで84ハンドレットウエイト(cwt、9408ポンド、約4.3トン)、 砲74門戦列艦で71ハンドレットウェイト(cwt、7952ポンド、約3.6トン)もの重さがあった。   6等級艦以上の木造帆船の多くは「Best bower anchor」、「Small bower anchor」、 「Sheet anchor」2個と4つの大錨を積んでいたが、当時の工業力では出来上がった錨の重さに多少のばらつきがあるのは当たり前、 艦に詰まれる錨のうち一番重いものが「Best bower anchor」、次に軽いものが「Small bower anchor」 「Sheet anchor」とされた。

 木造帆船軍艦には大錨の他に「Streem anchor」「Kedge anchor」と呼ばれる小さな錨も積んでいた。


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最終更新: 2012-03-10 (土) 21:27:46 (JST) (4635d) by captaintadano
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