彼女(船)のボディラインは最新型?
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彼女(船)のボディラインは最新型?
msg# 1こんにちは、解説ページを読んだあとだったのできのう4回目の鑑賞は十倍楽しく見られました、ありがとうございます。
ところで、ウォーリーとネイグルが模型を見せに来ますが、あの形は忠実なものなんでしょうか?HMSサプライズと比べてどう形が違うのでしょうか?
その後ジャックとプリングスも目をキラキラさせて「新しい時代になった・・云々」と興奮気味に話しているところからも、わかる人にはわかる美味しいところがあるようにみえるのですが、私にはさっぱりわかりません(笑)どこかでフランス艦はエラの張ったような形というのを目にしたようにも思うのですが・・・どうだったかしら。
ここまで書いて、船の形が素人の私に何処までわかるかはなはだ疑問(^_^;)ですが、理解の助けになりそうな本などご紹介いただけたらと思います。
Re: 彼女(船)のボディラインは最新型?
msg# 1.1>HMSサプライズと比べてどう形が違うのでしょうか?
うーむ、難しい質問が来ましたねぇ(^^;;
映画のアケロンですが、合衆国海軍の現役フリゲート艦USSコンスティチューションがモデルなのはご存知のとおりです。私は模型を見ただけで艦のラインの違いがわかるほど修練を積んでいないのですが、映画の模型はコンスティチューションのラインと同じと思ってよいでしょう。
映画のHMSサプライズは、実際には1757年に英国で建造されたHMSローズの復元艦です。USSコンスティチューションの線図は資料が無いのでわかりませんが、同型艦のプレジデントの線図が手持ちの資料本に載っていました。HMSローズの線図も資料本にありますので比較してみますと。
喫水線下のウィーター・ラインが艦首から船腹、船腹から艦尾にかけて違います。
HMSローズは艦首から船腹にかけてのふくらみ、船腹から艦尾にかけての収束が急になのにたいして、プレジデントは艦首から船腹にかけてのふくらみ、船腹から艦尾にかけての収束とも緩やかなラインを描いています。又、ガンデッキ長:船幅の比率が、HMSローズで3.6:1位、プレジデントで4:1位となっています。
造船学は解りませんが、プレジデントの方が、細身でファインな船型を持っており、水面下の抵抗が少ないものと想像されます。一方HMSはローズは全長が短くふっくらした船型ということでしょう。
ちなみにHMSローズは、王室ヨットロイヤル・カロラインの線図を利用して作られており、1757年当時としてはスマートな艦でした。
実物のHMSサプライズは、フランスで建造された旧名ユニティですが、資料本の線図を見る限りプレジデントとまでは行かないまでも、かなり緩やかなウォーターラインとなっています。ガンデッキ長:船幅の比率も4:1位であり、スピードの出るフリゲート艦であったことが想像されます。エラのはったようなタンブルホールは、フランス艦の特徴と言われていますが、HMSサプライズの線図を見る限り、そのような形状はしていません。時代、造船技師により異なるということでしょう。
>理解の助けになりそうな本などご紹介いただけたらと思います
えーと、全て英語の本になってしますけどよろしいので、この回答を書くだけでも以下の3冊の本を参考にしています。
The Sailing Navy List All the Ships of the Royal Navy
Warships of the Napoleonic Era
Frigates of the Napoleonic Wars
他にも洋書参考資料-艦艇に載せて有るコンウェイのAnatomy of The Shipは参考になります。
船型について解り易い本というとBrian Lavery「THE SHIP OF THE LINE vol.2」は時代毎の戦列艦の艦型が比較されていてとても参考になります。
でも本より、帆船模型を見るほうが解りやすいですね。線図では解りにくいことが、模型になっているとよく解ります。で、もっと良いのは自分で帆船模型を作ること、これはもう間違いないです(大爆)
参考資料も良いのですが、行き過ぎて私のように資料コレクターになってもしかたありませんからねぇ(^^;;
Re^2: 彼女(船)のボディラインは最新型?
msg# 1.1.1> うーむ、難しい質問が来ましたねぇ(^^;;
すみません、すみません。
只野様のお答えを見て、改めて自分の脳みそには過ぎた質問をしてしまったのだと深ーく反省しております、どうぞお許しをm(__)m
> プレジデントの方が、細身でファインな船型を持っており、水面下の抵抗が少ないものと想像されます。一方HMSはローズは全長が短くふっくらした船型ということでしょう。
なるほど、よくわかりました。上から見たとおりのイメージですね
> エラのはったようなタンブルホール
そういう呼び名があるのですね、一つ勉強になりました。
> この回答を書くだけでも以下の3冊の本を参考にしています。
あぁ、どうしましょうそんなたいへんなお手間をかけてしまったとは申し訳ないです…何でも安易に聞いちゃいけませんわね。只野様のご親切にお礼とお詫び申し上げます。
> で、もっと良いのは自分で帆船模型を作ること、これはもう間違いないです
あとは体で覚えろ!ですね。操船技術も体験が一番とおっしゃってましたし、なんでも頭の中だけでわかろうとするのは難しいということを痛感です。先日アマゾンでThe Young Sea Officer's Sheet Anchor: Or a Key to the Leading of Rigging and to Practical Seamanshipを注文したんですがどこまで理解できるかしら…
でも帆船模型って難しそうだな~
Re^3: 彼女(船)のボディラインは最新型?
msg# 1.1.1.1 横合いからお邪魔します。
帆船は後方から風を受けて航行するのが理想ですが、その場合、艦首が水中に押し込まれ、艦尾が持ち上がってしまいます。この状態になると舵の利きも悪くなりますし速力も低下します。このため、艦首部の帆を多く、艦尾側を少なくすると言う方法も採られましたが、艦首水線下の部分を膨らまして浮力を確保すると言う設計もされたようです。艦首が浮き上がることによって、結果として艦尾を下げようと言う訳です。
このため、艦首部を船体横断面で見た場合、最上甲板より水線部分の方に幅があり、ワイン・グラスのようになっております。これを、内側に傾斜するという意味の英語を使用してtumble homeと申します。現代では船体が外側に向かって広がるflare型、もしくは直立型の方が普通ですので、非常に奇妙な感じが致しますが、帆船時代にはこちらの方が普通でした。また、このような船体形状に致しますと舷側を登りにくいので、斬り込まれにくいと言う特質もあったようです。
一方、艦尾側はほっそりしており、水線上に艦尾楼(オーブリー艦長の部屋がある)が張り出しているのと対照的です。このような船型を鱈の頭・鯖の尻尾と呼んでおり、極端に言えば水滴のような形状を示します。イギリス海軍の場合、この膨らみの度合いが他国よりも強いようで、他国の艦を編入した場合はかなり動きが異なったようです。原作でも、オーブリーはマストの傾斜を変えたり、荷物の移動によってトリムtrim(釣合い)を変更してみたりして好みの艦に仕上げると言うシーンが出てきます。
エセックスじゃない、アケロンの場合は、アメリカ式の設計のようですが、長さと幅の比率はサプライズと似たようなものでありながら、ラインはもっと滑らかなようです。アメリカ艦の設計がどのような性質を持っていたか分かりませんが、そのような形状であれば、造波抵抗等は少なくなり、速力は向上したと思います。その一方で、安定性等では逆の結果になると思いますので、好みの問題かとは思います。
模型を一瞥した感じでは、艦尾側が非常に綺麗なラインを描いて伸びており、いかにも抵抗の少なそうな船型のように見えます。
当時のフランス艦の方がタンブル・ホームの傾斜が強かったかどうかは存じておりませんが、同国は20世紀初頭までこの形式を残しており、非常に特異な形状を示してはおりました。日露戦争時のロシア艦はフランス式の設計でしたが、傾斜した際に水線面積が増えないと言う問題点があり、復元性能が悪かったので、以後は余り使用されていません。
なお、かつては甲板の広さで課税額が異なっており、甲板を狭くして積載量を増やす目的で、このタンブル・ホームと言う形状は生まれたとも言われます。
蛇の足(おいおい)
msg# 1.1.1.1.1手元に資料もなにもないので簡単に。(無責任)
このあたりは、文化的なものより、造船工学や流体力学の世界になると思いますが、劣等生だった者が言うことですから、あまりあてにしないでください。(←おい!)
船の速度は、水(海水)に対する抵抗に左右されます。
その抵抗を減らすには、どうすればいいか。
まず最初に成すべき事は、よけいな凸凹をなくし、表面をなめらかにすること。フジツボや海草がこびりついた船底が、きれいな船底より遅いのは当然のこと。
つぎに、抵抗となる面積を減らさなくてはいけません。そのためにどうするか。水面(ウォーターライン)より下の面積を、極力減らす、つまりより平面に近い形にすればよろしい。水面下のふくらんだ下腹部をシェイプアップし、極端な話、平面にしてしまえばよい。
むろん、そうはいきません。重心点とか、GM値とか、要するにひっくり返らないだけの安定性と、揺れが許容範囲に収まるようなバランスがとれなくてはいけない。
第三に、水の流れがきれいに流れるようなラインに成形しなければなりません。
流線型とか涙滴型とか言う言葉がありますね? あの形です。この流線型は、飛行機の主翼などでもさんざん研究されていますが、実を言うとまともな研究はWW2直前のころからでして、船の形やスクリュープロペラの形状への応用などは、ほんの半世紀ほどのものです。(反論は受け付けます。ちょっと自信がない。←おい)
この、理想の流線型は、前から2/3のあたりが最大幅です。
さらに船は、二種類の流体(空気と水)の間の層の中を走る物体ですから、その二種類の流体に起こる攪乱現象(ぶっちゃけて言うと「波」です)による抵抗をいかに小さくするか、と言うことが問題になります。
この三つを元にあの模型のことを考えました。
ジャックの目から見て、と同時に船乗りの目から見て、決定的と言える違いがあったはずですよね。
船の半分より後のあたりが最大幅で、しかも前の方は比較的ふっくらしていましたが、後半は幅は広いにもかかわらず、水面下の「下腹部」は外へふくらむと言うより、やや内側に湾曲していたように記憶しているのですが、いかがでしょうか?
上半身ふくよか、下半身は細めに引き締まっていたのではないかな。(笑)
おそらく船体の割に積載量は少なめだったのでしょうね。
船首部の形状は、それ程違いがあったのかどうかわかりません。
これら形状が、従来の船の線形とはあまりにも異なったため船大工だったウォーリーの目を引き、そのあたりを誇張した模型になったのではないかと思います。
そして、素人にはわからないこの形状の違いが、ジャックたち船乗りを瞠目させたのではないかな。
一種のコロンブスのタマゴなのでしょうが、タマゴがわからない素人には、ただのつぶれたタマゴなのでしょう。(しくしく)
ありがとうございます
msg# 1.1.1.1.1.1hush様、鐵太郎様 解説ありがとうございます。
形の違いについて、霧の中の帆影のようになんとなくおぼろげに解ってきました。たぶん・・・
工学だの力学だのそっち方面はからきしオンチですので、基本的に船が浮かぶ原理からおさらいする必要があるかもしれません(爆)でも、興味は大いにあるのです。こどもむけの本などのほうが私に向いてるかな~
それで、帆船は前に突っ込む…つまりモーターボートとは逆と思えばよろしいのですね。tumble homeは斬り込みされにくい…舷側に隙間が開くからと理解してよろしいのでしょうか。かんちがいしてなければいいのですが。
確認してみました
msg# 1.1.1.1.1.1.1先日見に行った時に、再度じーーーっと船の形に注目してみました。
ハイ、確かにオシリのほうがすっきりしてるアケロンの模型、サプライズを艦尾側から映したショットと比べてみるとそう感じました、正しいかどうかはともかく(^_^;)すっきり納得した次第です。