ボルボ・オーシャン・レース、レグ2、各艇インド洋南の高気圧と南極海の低気圧の間を吹く北西からのの強風を受けて航海してきました。
しかし、現在、先頭のABN AMRO ONEはこのレグ最初のスコアリング・ゲートである、エクリプス島を目前にして、オーストラリア大陸南方の高気圧に行く手をさえぎられています。現在、速力7ノット、風速5ノット、風向N by E、針路ENE、軽風&エクリプス島まで向かい風です。ここで300海里ほどあった差を2位のABN AMRO TWOが先頭との差91海里、3位のMovistarが139海里と一気に詰めてきました。
各艇この高気圧帯をどう抜けてエクリプス島まで帆走するのか、果たして逆転はあるのか。一時期、ABN AMRO ONEが2位以下に大差をつけていたのですが、おもしろくなってきました。
残念ながら4位のパイレーツ・オブ・カリビアンは風を捉えそこなったようで、先頭から261海里後方です。
今回のボルボ・オーシャン・レースでは、カウンティング・キールが認められ、各艇装備しています。これは何かと言うと、ヨットの船体の水面下にあるキールと先端のバルブ(bulb重しです)を左右各40度の範囲で動かすことが出来る装置です。風を受けてヨットは、風下に傾きますが、その時キールを風上に動かし船体を起こすのです。ヨットは70トン前後、バルブは5トン、動かすと船体は動かした側にかなり傾きます。
映画「マスター・アンド・コマンダー」でもホーン岬のシーンで、風上側の手すり沿いにオーブリー艦長以下水兵たちが並んでいましたよね、あれと同じ。帆船にしても、ヨットにしても風を受けると船体は風下に傾きます。そうすると等喫水で速力の出るはずの船体、そして風を受ける帆共に効率が悪くなります。あとは、出来る限り帆を張りますのは良いが、傾いて風下側に転覆するのを防ぐというのもあるのかな。とにかく、風上側に重量を移して船体を出来るだけ起こしたほうが、しないよりは速力があがります。
今回のボルボ・オーシャン・レースで使用されているヨットはリーチング帆走で40ノット出るそうですが、高いマスト、大きな帆だけではなくこんな仕掛けもあったのでした。
しかし、帆走中に風下側に動いたらどうなるか、当然転覆の危険あり。レグ1でエリクソンが、カウンティング・キールを動かす装置の故障でこの事態となりました。風上に固定されてしまい、タッキングのとき反対舷に動かなかったというかなり危険な状況に陥ったようです。
うーん、ヨットのより高速化のためというのは解るけど、なにか釈然としないものが。
ヨットって風の力だけで走る(港内の機走は別)のが魅力。でも、カウンティング・キールは、ディーゼル・エンジンを積んで水圧ポンプで動かしているのです。これって動力で帆走しているようにも思えてしまう・・・じゃあ、通信とか航海機器とか、食事の準備、海水の真水化のためになにがしかのエネルギーを必要とし、ヨットといえどもエンジンと発電機が搭載されているのはどうなるのということになるのですが。
風の力と帆を操る人間の力、そして暖かい食事のための薪だけで航海していていた木造帆走軍艦の時代とは違うと言うことですね。でも堀江謙一氏の「SUNTORY マーメイド号」は、風の力とソーラー・パネルの電気だけで単独無寄港世界一周を成し遂げたのですよね、凄い人だ。
>果たして逆転はあるのか。
と昨晩書いたのですが、今確認したら、トップがABN AMRO TWOに、ABN AMRO ONEは7海里後方の2位に後退です。MovistarもABN AMRO TWOの後方12海里につけています。
パイレーツ・オブ・カリビアンも一気に差を詰めトップまで82海里です。
エクリプス島のスコアリングゲートは必ず通らないといけないポイント。しかし昨晩書いたように、エクリプス島までは向かい風です。今後の展開が楽しみです。