やっと、評判のテメレア戦記を読みました。
いや~、面白い! 時間を忘れて読みふける小説など近年無かったことです。
著者のキム・ノヴィックによると「テメレア・シリーズの家系図を描くとすれば、オブライアンとマキャフリイがいちばん最初の男と女のご先祖さま」だそうです。そうこの作品は、パトリック・オブライアン「オーブリー・シリーズ」とアン・マキャフィ「パーンの竜騎士」がルーツにあるのです。
だから物語の舞台は、ナポレオン戦争中の英国を舞台にドラゴンの担い手が、フランスのドラゴンと空中戦を繰り広げると言うものです。一歩間違えると荒唐無稽な物語りになってしまうと思うのですが、うまく融合されていて素晴らしい作品に仕上がっています。
王国海軍フリゲート艦リライアント艦長ウィリアム・ローレンスが、拿捕したフランスのフリゲート艦からドラゴンの卵を見つけ、その卵が艦内で孵化してしまい、ドラゴンの担い手に選ばれてしまうとこから物語りは始まります。そして、そのドラゴンはテメレアと名づけられ、ローレンス共々英国空軍(Aerial Corps)の一員として訓練を受け、ナポレオンとの戦いに出撃していくと言う物語。
オブライアンの「オーブリー・シリーズ」のテイストがかかっているといってもスコットランドで訓練を受けるところは、WW2の王国空軍戦闘機軍団の新米パイロットのようですし、大型ドラゴンの搭乗員とその戦闘はまるで爆撃機軍団のランカスターのようです。そして、英国空軍(Aerial Corps)に対する蔑視感というのは、WW1での王国空軍の前身Royal Flying Corpsに対する陸軍と海軍の蔑視感に似ています。
残念ながら「パーンの竜騎士」は読んだことが無いのですが、ドラゴンとその担い手の関係、ドラゴンの格闘戦は「パーンの竜騎士」のようですね。そして、この物語ならでの有名な海戦の顛末、ナイルの海戦、トラファルガーの海戦は「え~、そんなのあり~!」とのけぞってしまいました。
海洋冒険小説やらWW1、WW2のノンフィクションを長年読んできた私には、この訳語おかしくないとか、この設定間違ってると思えるところもあるのですが、そんなものは関係なく物語りに引き込まれてしまいました。
ちなみにテメレア(Temeraire)はフランス語で「向こう見ず」。ターナーの有名な絵画「戦艦テメレール」の主題となった砲98門戦列艦HMSテメレーアから名づけられていて、主人公が元船乗りということもあり、帆船の香りもたっぷり、海洋冒険小説ではないけれど、「オーブリー・シリーズ」の読者にはお薦めの1冊です。
2022年7月6日 08時55分35秒
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