William Falconerの「An Universal Dictionary of The Marine」1780年発行の稀覯本、オリジナルです。この本に収録されている図版は、しばしば参考資料に引用されていて、この本の存在は知っていました。英語の海事辞典としては、おそらく最古のものになります。
それが何故か神田神保町の古書店に並んでいて、店主に取り置きをお願いして、銀行のATMに直行、お金をおろして衝動買いした次第。私の蔵書では一番お高い本となります。一緒にワーテルロー古戦場の彩色銅版画画集も並んでいたのですが、さすがにこれまでは手が出ませんでした。
この時代フランス装で出版されて、購入者がページを切り離し、装丁し直すのが普通でした。この本も、購入者によって装丁されています。
染みが多く保存状態はあまり良いとはいえません。「An Universal Dictionary of The Marine」として知られていますが、表題は画像の通りとても長いものです。表題の通り木造帆走軍艦時代の海事用語、木造帆船の構造等が図版付きで解説されています。
1769年に初版が発行され、1780年版、1815年版が存在します。海外の稀覯本書店で入手しやすいのは1780年版、1,200ドルから1,400ドルくらいで売られています。1815年版は1780年版の倍の厚さがあるのですが、発行部数が少なく、まず見つかりません。あっても天文学的なお値段だとか。ちなみに1780年版、1815年版とも復刻本が出ています。
1815年版復刻本
この時代、紙は木材パルプから製紙されていませんでした。紙は着古したリネンから再生されたものです。そのため、現代の紙と比べるとゴワゴワしています。また、この時代の活版の特徴として小文字の「f」と「s」の区別が付きません。「ship」が「fhip」に見えます。単語から判断するしか無いという読みにくさがあります。
版権など当然切れていますので、WEB上には全文テキストを公開しているサイトもあります。それがGoogle Booksから図版込み無料でPDFファイルでダウンロードできるようになっている次第。
「An Universal Dictionary of The Marine 1780版」
凄い時代になったものです。私の蔵書は何ですかね、まあ、稀覯本を所有しているぞという満足感だけですね。
私は復刻版ですが1815年版のものを持っています。こちらも活字が不鮮明なところがありますが、内容の濃さには驚く限りです。巻末の図版も素晴らしいです。東京勤務のころよく神田の書店街を散策したものですが帆船関係の洋書はなかなか見つけられませんでした。オリジナルが日本の古書店で入手できるとは驚きですね…。
最近帆船模型製作のブログを開設しました。『空中の造船所』というタイトルです。よろしければ遊びに来てください。
Welcome aboard!五十路親父様∠(^^)
こんな場末のサイトにようこそ。
1815年版リプリントはChatham Publishingが男気出してくれたのでありがたかったです。しかし1780年版より活字小さいし倍以上の厚さがあるという読むのにはとても骨の折れる本でありますね。ちなみに図版は1780年版と1815年版で変わりはありません。
オリジナルの「An Universal Dictionary of The Marine」が何故神田神保町の古本屋に並んでいたのかは謎です。神保町の文華堂書店に帆船模型を作られていた方のものと思われる帆船模型に関する洋書がまとまって出たことがありブードリオ「74門艦」フランス語版4冊セットをゲットしたことがあります。ゲットしたのは良いがフランス語なのでちんぷんかんぷん、図面、図版だけ楽しんでいます。
ブログ、拝見いたしました。USS Constitutionを製作されて見えるのですね。私は英国海軍ばかりで、USS Constitutionは唯一アナトミーを持っているのみです。
英国海軍軍艦はリギング・ヤード・マストが等級によりすべて規格化されているので、1隻作れば後は応用で簡単よと故白井さんに言われたものですが、木造帆船模型ちょっと手が出ないです。
製作の進捗を楽しみに拝見させていただきます。